炎症とNAD+の減少
慢性炎症は「インフラマージング」とも呼ばれ、老化の代表的な症状です。この持続的で低レベルの炎症は、複数の経路を通じて NAD+ レベルの低下を引き起こします。
NAD+代謝における炎症の役割
炎症は免疫細胞の活性化を引き起こし、CD38 を高レベルで発現します。これらの細胞における CD38 の活性増加は、NAD+ の分解を加速させます。さらに、TNF-α や IL-6 などの炎症性サイトカインは CD38 の発現をアップレギュレーションし、NAD+ の消費をさらに増幅します。
炎症は NAD+ の合成にも影響を及ぼします。慢性炎症状態の間、体内の de novo 合成経路による NAD+ の生成能力が低下します。トリプトファンを NAD+ に変換するこの経路は、炎症シグナルの存在下ではダウンレギュレーションされ、NAD+ の生合成が減少します。
CD38誘導性NAD+減少のメカニズム
CD38 は、マクロファージやリンパ球など、多くの免疫細胞の表面に発現する NAD+ 消費酵素タンパク質です。加齢とともに CD38 の発現が増加し、NAD+ 消費量が増加します。この活動により NAD+ の利用可能性が低下し、ミトコンドリア機能、DNA 修復、細胞エネルギー生成など、この補酵素に依存する機能が損なわれます。
CD38 は、サーチュインや PARP (ポリ ADP-リボースポリメラーゼ) などの他の NAD+ 消費酵素にも影響を与え、NAD+ の枯渇をさらに促進し、細胞の老化を促進します。